陽助さんの部屋

鉄拳/ラス仁・花仁・真仁 はた細/白キラ・ヘルキラ

バサガム。悩み

レイとビヒーダに練習場で、ミレーヌに嫉妬していると

告げたバサラ。

レイもビヒーダも最初は驚いたが、次第に応援するようになる。

ミレーヌには判らない様に。

「バサラ。」

どこからか帰って来たバサラに廊下でレイが声をかける。

「お茶でもどうだ?」

「………。」

なにも答えず、レイの部屋へと入って行くバサラ。

最近、いつもにも増して無口になった。

部屋から聴こえるギターの音にも力が無い。

心配になったレイは、バサラに声をかけたのだった。

「どうだ、調子は。」

「別に。」

「なにか困ってるなら言えよ。出来る限り力になる。」

「…………。」

手にしたカップをぎゅっと握ると、テーブルに置き

バサラが口を開く。

「あいつにオレのハートは届いてるんだろうか…。」

「………。」

レイは黙る。

ガムリンの事は、慎重になる。

バサラが初めて真剣に惚れた相手だから。

「こんな気持ちになったのは初めてだ。アイツが居ないと

 力が入らねぇ。」

「…………。」

じっとバサラをみつめて話を聞いている。

話す事で少しは楽になるだろう。

なにか助言出来ればしてやろうと構えているレイ。

「いざ、アイツがいると力みすぎちまう。」

「いいんじゃないか。それもお前だ。ガムリンにはなにかきっと

 伝わってる。」

「………あいつ、敏感なのか鈍感なのか………。」

溜息をもらすバサラ。

つい先日、野外ライブした時の事だ。

チケットを渡してあったので、バサラの目の届く範囲に

ガムリンは居た。

曲が盛り上がるとガムリンも紅潮し興奮している様子だった。

バサラのコーナーになり、マイソウルフォーユーを歌った。

ガムリンは、普通に聴いていた。感情を込めた歌だったが

ガムリンは至って普通だった。

ミレーヌのコーナーになり、ピロードリームをミレーヌは歌った。

ガムリンは揺れていた。曲に乗りゆらゆらと。

顔はミレーヌを見てうっとりしていた。

ライブが終わり、楽屋へガムリンがやってきて

「マイソウルフォーユー、心が震えた。いい歌だった。」

とバサラに告げた。

ガムリンは嘘はつかない。わかっている。

でも、明らかにミレーヌの時と反応が違った。

それでも「心が震えた」と言われ、なにか伝わってはいるのか

と思った。

そこへミレーヌが入ってくる。

ガムリンの態度が変わる。

今までぴしっとしていたが、へにゃへにゃしている。

まるで、大好きな人の前の犬。

シッポが振られているのが見えるようだ。

なにも伝わっちゃいないと思った。

「バサラ。時には攻めて行かないと伝わらんぞ。」

「………!………攻める?」

思い浮かべていた事を見透かされた様にレイが言う。

ミレーヌの事もあるから、言葉で伝えにくいとは思うが

 お前がガムリンを好いている事は歌では伝わりづらい。」

ミレーヌは関係ねぇ。」

「そうか。」

「歌じゃダメなのか?」

「こればっかりは、歌では無理だろう。」

「…………。」

「ガムリンに対する友情以上の気持ちは

 本人にはっきり言葉で伝えないと伝わらんだろう。」

「…………。」

「お前が時間がかかっても歌でいくというなら止めないが。」

「ミサイルみたいだな……。」

「積みたくないか?」

「………。」

なんで歌にこだわってるんだろうか。

やはりミレーヌと張り合っているのか。

ライブでオレにうっとりするガムリンが見たいのだろうか…。

レイに相談したあくる日

ビヒーダと練習場で二人っきりになった。

「どうなの…」

ビヒーダが声をかけて来た。

「あんまり良くねぇな…。」

調子は良くない。なにかが引っかかってる。

ガムリンの事なのだろうとはわかっているのだが

解決する方法がわからない。

「無理しないで…」

「サンキュー」

ビヒーダも、ガムリンとの事を気遣ってくれている。

もっと簡単な事だと思っていたが、こんなにも

重苦しく困惑する事だとは思わなかった。

自分の部屋のベッドで寝転ぶバサラ。

もう夕方だ。

そろそろ飯か…。

コンコンと、ドアをノックする音が下でする。

「開いてるぜ。」

いつものようにそう言う。

「やあ。」

久しぶりに聴いた声に、飛び起きる。

「もしよかったら、夕飯一緒にどうだ?」

下の階でガムリンが食事に誘ってきた。

「…ミレーヌはどうしたんだよ。」

一気に下に飛び降りるとガムリンに言う。

「ははは、今日は都合がわるかったみたいで。」

「代打か。」

「嫌か?」

頭をぼりぼりと掻くと申し訳無さそうなガムリンの顔に

やられて、「行くぞ」と答える。

男二人で来る様な感じの店では無かった。

周りはカップルだらけ。

「今、流行らしいんだ。」

「へー。」

「いつもは、ジャパニーズレストランに誘うんだが

 あまり気に入ってないようなので、流行の店の方が

 いいかと思ってな。」

「無理しなくていいんじゃないの。」

「え…。」

「連れて行ってもらえるだけ有り難いだろ。」

「………そうか?」

水をぐいっと飲むバサラ。

密かに緊張している。

申し訳無さそうなガムリンの顔や、嬉しそうなガムリンの顔を

見ているとドキドキした。

初めて出逢ったギターを弾く時のような感じに似ている。

どんな音なのか考えるだけでドキドキする。

「美味いか?」

「こんなもんなんじゃねーの。」

運ばれて来たコース料理を食べる。味気ない。

「ああ、お前は辛いのが好きだったか。」

そう言うと、店員を呼んで四川麻婆豆腐とご飯を頼む。

「なんで、知ってんの?」

「あ?ああ、プロフィールに載ってるだろ。」

「ふーん。オレのプロフィールなんか読むんだ。」

嬉しくなる。

「お前は謎だらけだからな。少しでも知りたかった。」

「ああいうのレイが全部管理してるからオレは知らねぇんだ。」

「え…。でもその方が正確か。お前適当に答えそうだからな。」

ふふっと笑う。

さっきまでの緊張が嘘の様にほぐれ、気持ちが高揚する。

ガムリンといると気持ちがいい。

こんな風に思わせるのはガムリン以外にはいない。

レイと似ているが、レイといても高揚はしない。

四川麻婆が運ばれてくる。

山椒の香りが鼻をくすぐる。

「うまそう。」

ひとすくい口に運ぶ。辛味が口の中に広がる。

呑み込むと喉がカッと熱くなる。

「うまいか?」

「食ってみろよ。」

ひとすくい、ガムリンに食べさす。

「ぐっ…げほげほ」

辛さに咽せる。

「す、凄い辛さだな……。」

水を飲むとガムリンが舌を出しながら言う。

「オレ好みだぜ。」

バサラが美味しそうにバクバクと麻婆豆腐を食べていると

シェフが出てくる。

「バサラさん!!気に入ってもらえましたか?」

「ああ、最高にイカしてるぜ。」

シェフは赤い顔をして興奮しているようだ。

帽子を脱いで両手でぎゅっと握りつぶすと緊張したかの様に

「サ、サイン頂いてもよろしいでしょうか?!」

とどもりながら言って来た。

「いいぜ。」

店員が持って来た、色紙にサインするとシェフの帽子にもサインした。

「あ、ありがとうございます!!!!!!!」

嬉しそうにシェフが下がって行く。

嵐の様な出来事に目を丸くするガムリン。

「すごいな…。」

「あ?」

「お前はすごいな。あまり実感がなかったが、こうなると

 実感せざるをえない。」

「お前もサイン欲しいの?」

「え。」

「ん?」

店員が置いていったペンを手に取るバサラ。

照れくさそうにガムリンがハンカチを出す。

「じゃぁ、いつも持ち歩いてるこれに。」

すらすらとサインするバサラ。

「ありがとう。大事にするよ。」

「いくらでも書いてやるよ。なんならバルキリー

書いてやろうか?」

「ははは、それもいいな。」

大事そうにハンカチをしまうと、ニコニコとバサラに笑顔を送る。

その笑顔に嬉しくなってバサラも笑顔になる。

「お前の笑顔初めて見た。」

ガムリンが真顔になる。

はっとするバサラ。急に恥ずかしくなる。

「ば、ばかやろう。オレだって笑うぜ。」

「そ、そうだよな。はは、ははははは。」

急にぎこちなくなる二人。

「今度は、きちんと誘うよ。」

「え?」

ミレーヌさんの代打じゃなくて、お前を誘う。」

顔がにやける。ガムリンが自分に向いた気がして。

「一緒に行ってくれるか?」

「ああ。いいぜ。」

食事を済ますと、ガムリンはバサラを送って帰って行った。

バサラは上機嫌で、部屋に戻り、ギターを奏でる。

優しい音色のなかに、明るさが込められ聴くモノの心も

明るくする様な調べだった。

「余計な心配だったか……。」

レイはその音色を聴いて、苦笑を浮かべた。

おわり

バサガムなのかガムバサなのか。。。。

どっちでもいいか。(笑)

でもタイトルが、バサガムなのでバサガムってことで。