陽助さんの部屋

鉄拳/ラス仁・花仁・真仁 はた細/白キラ・ヘルキラ

レイとバサラ。その1

荒野。

オレは上も下もわからないくらい飲んで彷徨っていた。

どれくらいそうしていただろう。

どこからともなくギターの音が聴こえてくる。

力強い歌声も聴こえてくる。

無意識のまま、釣られる様に音のする方へ歩いて行く。

一人の少年が、自分と同じくらいの大きさのギターを抱え

懸命に歌っている。

「練習か…?」

今まで吹いていた風が止む。

少年はピタリと演奏を辞め街の方に歩きだす。

なんだったんだろうか…。

酒が切れそうだ、街に寄る事にするか。

次の日、何となくまた少年がギターを弾いて居た場所に

同じ時間に行ってみる。

気になっているといえばそうだ。

少年とは思えない程のパワフルな演奏。

萎えたオレの心に何かが引っかかった。

少年は来なかった。

気まぐれな演奏だったのか?

明け方、目が覚めて山の方を見る。

少年の事が気になって、また足を運んでしまう。

居た。

またもや懸命に歌っている。

山に向かって。

響かせようとでもしているのか?

その日の夜、酒場へ寄った。

隣の客が少年の話をしている。

「あの子はどこの子なんだろうな?」

「さあ。この街の子ではないんじゃないか?」

正体不明なのか。

増々謎めいているな。

山に向かって懸命に歌う少年。

昔、ステファンが言っていた。

「お前、確かピアノが得意だったな?」

「え?」

「どれくらいの腕前なんだ?」

「普通だよ。子供の頃習ったんだ。」

「作戦Mって知ってるか?」

「作戦M?」

ゼントラーディとの戦闘を歌で終らせるって計画だ。」

「そんなこと出来るのか?」

リン・ミンメイは知ってるか?」

「ああ。でもあれは相手の戦意を下げるだけだと聴いたが。」

「いや、終らすんだ。戦闘を。」

「歌でか。そんな事が出来たら、夢のようだな。」

「オレが歌が上手かったらなぁ。作戦に参加するんだが。」

「ははは。」

「山を動かす程の歌を歌えたらなぁ。」

「山か…。でかい山だよな。」

「山…か。」

あの少年は、山を動かそうとしていたりしてな。

まさかな。

「ちくしょう!!」

気になって足を運んだ山の裾野の荒野に少年の声が響く。

「まだまだ足りないぜ!あばよ、今度あったら絶対動かしてやるからな!!!」

「動かす…!」

少年は、そう言うとどこかへ歩き去ってしまった。

あの少年は、本気で山を動かそうとしていたのか。

ふっ、ふははははははは!!

オレは笑った。

酒に逃げてから初めて笑った。

オレにもまだやりたいことがあったのだ。

作戦M。

ステファンが叶えたいと言っていた計画。

オレは、探す事にした。

山を動かす程の歌い手を。

色々な街を巡り、歌い手を捜す旅を続けて行くうちに

あの少年がその歌い手なのではないかと

思い始めていた。

歳の頃は、あの時9才くらいだろうか。

あまりにも若かった為に見落としていたが

あの歌声は、スゴかった。

萎えた自分も奮い立たされた。

どこへいってしまったんだろうか。

歌い手探しの旅は、いつの間にか少年探しの旅に変わっていた。

少年と出会ってから、5年。

旅の資金を貯める為に日雇いの仕事をしていたとき

仕事仲間からある噂を耳にする。

「めっぽう心に響くいい歌を歌うガキがいるんだよ。」

「へぇ、どこで聴けるんだい?」

「昨日の晩、ここの飯場で飲んでたら歌が聴こえてな、

 外に出て見ると、そこの砂置き場の上でガキが歌ってんのよ。」

「歳の頃は、14くらいか?!」

オレは、あの少年かもしれないと興奮した。

「ああ、そんなもんだな。若けぇのにたいしたもんだったぜ。」

オレは確信した。絶対にあの少年に違いないと。

その日から、飯場に泊まる事にした。

何日経っただろうか、金もそこそこ貯まって来た頃だった。

大きく成長した少年が、砂山の上に立ち、鼻歌を歌っていた。

「おい!少年!!」

「?」

「オレと山を動かしてみないか?」

驚いた顔をしていた。

飯場に置かれていた古びたアコーディオンを担ぐと昔教わった曲を

弾く。

少年は、おお!と瞳を輝かせると、ハミングしながらギターを

弾き始める。

セッションが始まった。

現場にいた仲間達が寄ってくる。

「おっさん、やるじゃねーか!!」

「ははは。だろ?」

何曲かセッションすると、どこからともなく歓声が湧く。

「レイ、あんたそんな特技があったのか。」

「ガキも、やるもんだな。」

「いいもん聴かせてもらったぜ。」

みな口々に言う。

オレと少年は汗だくになった。

こんな気持ちのいい汗は、いつぶりだろうか。

「もういっちまうのか?」

「ああ、世話になりました。」

金を受け取ると、現場を後にする。

フェンスの側で少年が待っていた。

「オレ、バサラ。よろしくな。」

「おお、オレはレイだ。よろしくな。」

歌い手はみつかった。

だが、その先の計画がない。

作戦Mが軍で今も実行されているのかもわからない。

一先ず、昔の軍の仲間に連絡を取る事にした。

近々進駐するマクロス7の艦長が作戦Mに理解があるという事が

わかった。

バサラに相談する。

「宇宙に出るか?」

「宇宙は広いか?」

「ああ、それはそれは広い。」

「行く。」

「よし!」

もう定員は決まっていたマクロス7に乗る事になった。

軍の重力実験で破壊された建物がある、アクショというエリアに

住み着く事になった。

当初、切り離す計画もあったのだが、なにかあった時にということで

くっついたまま運行される事になった。

バサラとの生活が始まる。

つづく

レイのピアノの腕前はクラシック的には的外れだけど

感傷のレベルは高い。

ソウルフルな調べを奏でられます。

どこで覚えたかというと、孤児院の黒人の教会でシスターに

暴れん坊だったレイを落ち着かせる為になにかないかということで

音楽は好きだったみたいだから、ピアノを弾かせてみたという。

シスターがマンツーマンで愛情たっぷりに教えたら

いい感じに上達。

ミサの時に、演奏する腕前になった。

誰かの歌に合わせて弾く事が得意。アドリブもきく。

バサラとの相性は抜群だと思われます。

続きは、アクショでの話。